くらはしのクラシック日記

~倶楽趣博人(くらはしひろと)の随想クラシックの思い出、Cafe Klassiker Hrを受け継いだブログです~


2022.10.2(日)14:30 愛知県劇術劇場コンサートホール
出演
アレクサンドラ・ドヴガン(ピアノ)
広上淳一(指揮) 京都市交響楽団
曲目
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
ショパン:ピアノ協奏曲第2番へ短調 作品21
(ソロ・アンコール)バッハ(ジロティ):前奏曲 ロ短調
R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」 作品20
         交響詩「死と変容」 作品24

長く京響の常任を務めてきた広上さんが来年3月に退き沖澤のどかに変わるので名古屋ではこれが最後となる。京響はオペラか宗教曲で聴くことが多かったのでオケにどっぷりと浸かってみたいと出掛けた。

広上さんはゆったりした叙情的な曲が合うと思うので、その意味でこのプログラムは向いてないような気もする。それだけに逆に広上さんの特徴がよく分かるようにも思う。テンポは遅め、角がなく繋ぎの隙間がない音で、柔らかな肌合いの表情豊かで起伏のある演奏である。それでいてじわっと来る迫力は十分にある。

そういう美しい演奏だったから私の抱いている曲のイメージに合わず、ロッシーニは軽快さがRシュトラウスには華麗さが欲しいと思った。最後の「死と変容」は普通なら苦にならないと思うがここではティンパニーがびっくりする音を出し奇異に感じてしまった。ピアノのアレクサンドラ・ドヴガンはまだ14歳。弱音が美しく感性の豊かさを感じさせる演奏であった。広上さんは彼女を引き立てようとオケを随分抑えていた。それでもショパン・コンクールが終わったばかりなのでこの時期にショパンはタイミングが悪いと思う。

音楽には共感しなかったが京響の演奏は見事である。個々の音もアンサンブルも素晴らしく全体のバランスが実によく取れている。これは広上さんの15年に亘るトレーナー指導力が結実したものと思う。一方ここまで引き上げたから京響は新たなステップに乗り出すべきと引退したと想像する。若い沖澤さんに期待しよう。

今回初めて携帯の電子チケットを使った。パスワードが思い出せず一瞬焦ったが事なきを得た。会場で見たらまだ紙チケットが多かったようである。年寄りにはきつい時代になった。

 

 


2022.9.30 ラジオ・フランス・オーディトーリアム(ARTE concert)
出演
ヴィルジニー・ヴェレス(メゾソプラノ)、アンドリュー・ステイプルズ(テノール)、エドウィン・クロスリー=マーサー(バス)
ダニエル・ハーディング(指揮) ラジオ・フランス・フィルハーモニー管弦楽

シェイクスピアのドラマティックなフィクションは音楽にもってこいである。その中でも「ロメオとジュリエット」は管弦楽、オペラ、バレエとジャンルが違うが、ベリリオーズ、チャイコフスキー、グノー、プロコフィエフの4人が作品を書いている。どれも名曲ばかりである。最初に出た先輩格がベリリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」で、3人のソロと合唱を含む全7部1時間半の大曲である。情景描写や叙情表現が素晴らしく感覚的に分かり易い。ワーグナーの楽劇に影響を与えたとされ、確かに「トリスタンとイゾルデ」に繋がる音が聴こえる。

シェイクスピアと同じ国イギリス生まれの若い指揮者、ハーディングは約30年前10代で新星の如く現れ世界を風靡した。現在まだ40代だが既に世界各国のトップ・オーケストラを制覇し、日本での活動も盛んである。経歴もケンブリッジ大学卒、パイロットという異色で、数年前エアフランスに就職すると言って騒がせた。最近若い指揮者が次々現れていて、時代は大分離れているがその先鞭を切った指揮者と思える。ハーディングが
20代の頃に比べ落ち着いた感じがするのはその人たちの所為もあるかもしれない。

ハーディングのレパートリーは古典から現代まで広いが、ベルリオーズの
「ロメオとジュリエット」は得意と見え世界各地で演奏している。ソロや合唱が入るところは声を生かし、オーケストラだけの演奏は各楽器の音色を生かし特に木管が素晴らしかった。若手のソリスト3人は皆オペラチックでない正統な歌唱で、特にメゾの新進ヴィルジニー・ヴェレスが清純な声でジュリエットに相応しかった。ソロや合唱の歌う位置がその場面場面で変わっていたので音楽の全体の響きを重視したと思う。

大曲でもマーラーやブルックナーほど聴く機会に恵まれないが、ベルリーズは色彩的に鮮やかで分かり易くもっと演奏されてよいと思う。

芸術の秋10月に入ったので少しでもコンサートに出掛けたいと思っている。





2022.7.9 ヴェネツィア・サン・マルコ広場(NHK-BS)
出演
レギュラ・ミューレマン(S)、ミヒャエル・シェーデ(T)、マルクス・ウェルバ(Br)
ファビオ・ルイージ(指揮)、フェニーチェ歌劇場合唱団、管弦楽団、ヴェネツィア児童合唱団
曲目
カール・オルフ:「カルミナ・ブラーナ」

ファビオ・ルイージはイタリア出身、オーストリアで学び広く世界で活躍する大家である。今年9月からN響首席指揮者に就任し先頃記念コンサートが開かれたばかりである。だがイタリアで指揮する機会はそんなに多くないと思う。これはヴェネツィアのサン・マルコ広場での野外コンサートで、今はコロナ禍で観光客も少ないからいいけれど通常なら会場設営が大変だったろうと思う。

カール・オルフは「カルミナ・ブラーナ」しか知らないが、それがスポーツ、映画、コマーシャルなどに使われる有名曲になっている。本来は舞踏を伴う舞台作品だが上演が難しのか通常コンサートとして演奏される。舞台上演を観たことはあるがバレエに関心の薄い者にとってそれが意味する内容を理解できない。

ルイージの指揮は活力があって素晴らしかった。いたずらに力強いリズムを強調するのでなく、オペラ指揮者らしい迫力と抒情性の両方がある演奏であった。3人の独唱者はそれぞれ歌詞の内容に相応しい出演者だった。ミューレマンの乙女らしい清らかな声、オーストリア宮廷歌手シャーデの寂しい心境の歌唱も味わい深かった。 一番出番の多いウェルバは安定した正統派だった。オケも合唱も良かった。ただし全体としてこの曲の名演、小澤征爾と晋友会ベルリンフィルを超えるのは難しいと思う。

このコンサート入場料が1万~5万円とかなり高い。映像を観ると椅子席は広場の奥半分くらいを使い1000席くらいと見た。後ろ寺院側に多くの人が群がっていたが広場を閉鎖した様子もなかったから多分無料なのであろう。

余談だが2020年ヴェネツィア市創立1600年の記念コンサートがここで開かれたそうだ。塩野七生「海の都の物語」によれば452年と年代記にあるそうで、それより30年前創立となるとどこかに記録があるのであろうか。


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