2022.9.8 パリ・フィルハーモニー(medichi.tv)
出演
クラウス・マケラ(指揮) パリ管弦楽団
曲目
カイヤ・サーリアホ:小惑星4179 トータティス
R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき Op.30
ジミー・ロペス・ベリード:アイノ
パスカル・デュサパン:A Linea
スクリャービン:法悦の詩 Op.54

音楽監督クラウス・マケラのパリ管弦楽団2022-23シーズン開幕公演である。R.シュトラウススクリャービンに現代音楽を組み合わせた意欲的なプログラム。それも現役作曲家を3つも加えるとは自信がないとなかなかできないと思う。3人ともフィンランドに所縁のある人だが、物理的でなく映画音楽を聴くかのように感覚的に馴染める作品であった。

カイヤ・サーリアホは日本でも割に知られている。フィンランド出身でパリで活躍する女性長老で武満徹作曲賞の審査員を務めたこともある。またオペラ「余韻」が昨年東京で上演された。「小惑星4179 トータティス」は神秘と優雅を併せ持った平安朝を想わせるような日本的響きがあった。ジミー・ロペス・ベリードはチリ生まれだがシベリウス・アカデミー出身でサーリアホに学んだ。「アイノ」はゆったりした音楽だが起伏が極めて大きい。可笑しな連想で申し訳ないが、探偵映画でいろいろの場があって大いに盛り上がり事件が解決するといった感じである。もう一人パスカル・デュサパンはフランスの作曲家で、ロペスとは全く違った抑圧された重苦しい雰囲気の曲である。初めて聴いた現代音楽でも抵抗なく普通に聴けたのは作品の選択もあるがマケラのストーリー性を持った譜読みの力もあると思う。

初めての曲は演奏よりも曲自体に興味が行き易い。マケラの素晴らしさが分かったのはR.シュトラウススクリャービンであった。「ツァラトゥストラはかく語りき」はニーチェの著作による交響詩で、マケラはそれぞれの情景を色彩豊かにドラマティックに描いた。「法悦の詩」は正にワーグナーの愛の世界を力強く描いた素晴らしい演奏であった。マケラはオケを煽り立てるタイプだから生き生きした迫力と感情豊かな表現で惹きつける。前回聴いたサロネンとパリ管も良かったが、マケラの方が変化がありドラマティックで面白いと思う。若いから外観的に派手な曲で彼の魅力は発揮されると思う。

来日が楽しみである。 


マケラのヴェルビエ音楽祭における感想はこちら
2022年08月01日 : くらはしのクラシック日記 (blog.jp)