くらはしのクラシック日記

~倶楽趣博人(くらはしひろと)の随想クラシックの思い出、Cafe Klassiker Hrを受け継いだブログです~

2019年07月

2019.7.28(日)18:00(現地ライブ staatsoper TV) 

出演:

アグリッピーナ:アリス・クート

ネローネ:フランコ・ファジョーリ

クラウディオ:ジャンルカ・ブラット

ポッペア:エルザ・ベノワ

オットーネ:ユリア・イェスティン・デイヴィス ほか

バイエルン国立歌劇場管弦楽団

指揮:アイヴォー・ボルトン 

演出:バリー・コスキー

 

今年のミュンヘン・オペラ・フェスティバル注目公演のひとつで、先頃観た「サロメ」とともに新制作。これ迄観たヘンデル・オペラの中で最高だった。

 

ローマ帝国4代クラウディウスから5代ネロに移る時代の話。アグリッピーナはネロの母親で後にクラウディウスの妻となる。(ネロは連れ子で養子になる) アグリッピーナは権力欲が異常に強く絶世の美女だったらしい。オペラのストーリーとは違うが史実では、アグリッピーナはクラウディウスを暗殺してネロを皇帝につけるが、ポッペアとの結婚に反対してネロに殺害されてしまう。

 

オペラの中の話としては何時でも何処でもありそうな人間模様なので、コスキーは歴史的事実を考慮した上で現代感覚で演出している。舞台中央に大きな長細いスティール製の装置。長い階段がついた2階建てで上下とも3部屋に分かれている。それが頻繁に回転することで場面が変わる。人は部屋を行ったり来たり、階段を上ったり下りたりで実によく動き回る。言い寄ってくるオットーネ、ネローネ、クラウディオの3人をポッペアが裁く場面など実に面白く、物思いに耽る時以外はまるでコメディーを観てるようであった。しばしば会場の笑い声が聞こえた。またフィナーレが特に印象的だった。策謀を図るアグリッピーナを見捨て一人一人、最後にネロもクラウディオも去って一人舞台に残される。そこで音楽も消えゆくように静かに幕が降りる。

 

歌手ではネローネ役カウンター・テナーのファジョーリが最高。声だけ聴いていたらメゾと間違えるくらいで、転がりが良く声も強くて自然に歌っていた。ネローネの化粧衣装だけが変態っぽく、きつい母親に反抗する不良少年のようであった。タイトルロールのアリス・クートも凄い。ズボン役が得意のように記憶しているが、アグリッピーナは強い気性の女なので存在感があって素晴らしかった。ポッペアのエルザ・ベノワも実に芸達者で感心した。2年前のバイエルン日本公演でパパゲーナを歌っているがその時のことは分からない。でもこの種の軽い性格の役が向いているのであろう。15段もの階段を一気に上って歌うなんて若くないと出来ないと思う。オットーネ役のカウンターテナー、イェスティン・デイヴィスもファジョーリに比べると弱い声で、それがまた適役だったと思う。その他8人全員が皆揃って素晴らしく、生き生きした舞台で退屈しなかった。

 

この公演の最大の功労者は指揮者だと思う。ボルトン は強弱、テンポ、フレーズの処理、間の取り方など自在に操り、迫力があり感情のこもったドラマティックな演奏だった。4回の公演のうち3日目だったので最も調子の出た時だったかもしれない。ヘンデル・オペラをこれ程身近に感じたのは初めてだった。

 

舞台も音楽も言うことなしのこの上ない大熱演。オンデマンドが8月12日迄あるのでもう一度観たいと思っている。

 

 

2019.7.27(土)18:00 宗次ホール

出演

ホフマン:青柳素晴、ステラ/オランピア/アントニア/ジュリエッタ:天羽明恵、

ミューズ/ニクラウス/アントニアの母の声:鳥木弥生、リンドルフ/コッペリウス/ミラクル/ダペルトゥット:須藤慎吾、フランツほか(テノール):小山陽二郎、クレスペルほか(バスバリトン):大澤恒夫、ピアノ:江澤隆之、ほか

 

素晴らしい声を間近で堪能した贅沢なコンサート。ポピュラー物でもない「ホフマン物語」だが演奏会形式というのも更に珍しい。300人の小ホールでピアノ伴奏による歌だけで聴かせようというのだから興味が湧く。どちらかと言えばオペラ通向きの企画であろう。それだけに豪華な出演者を揃えた公演であった。

 

リサイタル向けのステージに下手にピアノ、前側に4本の譜面台、後側に横一列の椅子が並んで、歌手は歌い終えると舞台から下がる。幕毎に全体の照明は変えていたが完全なコンサート形式。字幕がついたのは有難かった。

 

第一線で活躍中今が旬の歌手オンパレード。皆凄い声であった。青柳素晴はホフマンとしては少し声が重い感じがするが、長丁場を全く草臥れることなく歌えるのはさすが実力者だと思う。久し振りに聴いた天羽明恵は持ち役オランピアでは仕草を加えて歌い面白く聴けた。普通4役を一人で演ずるのは例外的だが、それに挑戦したのは凄いと思う。彼女だけが性格の全く異なる役柄を衣装を取り換えて歌い雰囲気的にも変えていた。鳥木弥生は落ち着いた声で天羽と違った脇にぴったりで、立ち姿も美しく一番気に入った。須藤慎吾はこのオペラの牽引役だが、悪者を豊かな声量でもって歌い切った。フランツほか召使を歌った小山陽二郎は遜ったような味が出て良かった。またクレスペルほかを歌った大澤恒夫も豊潤な声で素晴らしかった。

 

ただ折角の声もこのホールでは良さが生きたとは思えない。響き過ぎるのである。迫力の限界を超えてむしろ騒がしく聴こえてしまう。強弱が薄まって感情の起伏が弱まってしまう感じである。大きなホールで聴いたらもっと素晴らしかったに違いないと思う。

 

東京五反田でも公演があったそうだがどうだったでしょうか。こちらはかなり空席があって残念でした。

 

 

2019.7.6(土)20:00(現地ライブ OPERAVISION)

出演

ルーナ伯爵:ルドヴィク・テジエ

レオノーラ:マリア・アグレスタ

アズチューナ:エカテリーナ・セメンチュク

マンリーコ:フランチェスコ・メリ  ほか

レアル劇場合唱団、管弦楽団

指揮:マウリティオ・ベニーニ

演出:フランシスコ・ネグリン

 

先日のロイヤル・オペラに続いてテアトロ・レアルの7月公演。新制作の上、好きなオペラだし、歌手も揃って良いので期待して観た。

 

「トロヴァトーレ」は台本最低、音楽最高のアンバランスが面白いと言えば面白い。自分の子を敵の子と間違えるとか、その子を実の子として可愛がり育てたのに処刑されると今度は敵を取ったと喜ぶなど無茶苦茶な話だが、音楽としてはヴェルディの中でも最も素晴らしいと思う。この変なオペラを忠実にそのまま舞台に上げるとなると、全く真実味がないばかりか何を表現したいか分からないものになってしまう。観る者に印象づけるにはザルツブルグでやったように伝説の話にするか、話の中身に気が回らないようにするしかない。このネグリンの演出は後者を狙ったもののように思う。

 

まずは演出面について;

舞台は暗いモノトーンで極めてシンプルな直線的造形である。周囲を壁で囲まれた広い空間に場面ごとに狭い演技場ができる。教会は窓の空いた細い塔、地下の牢獄はセリの窪みで、他にも長短四角の台があるだけでリアルなものは何もない。衣装も現実的でない。着ている服は今風なのに武器は銃でなく剣。また息子や母親を黙役として登場させているのも特徴的である。端的に言ってしまえば要するに観る者に空想させる世界を提供しているようである。一つ一つは容易に分かるものだが考えてる間に舞台はどんどん進んでいく。

 

音楽面について;

ベニーニの指揮はこれがいつものスタイルかどうかは知らないが恐ろしく超スローテンポ。遅くてもリズムがはっきりしているのは良かったが、時々アンサンブルが乱れる。この遅さではやむを得ないと思う。歌手には大変な忍耐を負わせていたことだろう。息が続くかと心配になることさえあった。アリア中心で、弱音を極端に要求し、最後を思いっ切り伸ばすので確かに抒情性はよく出る。歌手はさすが素晴らしかったが中でもアズチューナのセメンチュクが一番良かったと思う。4人の歌手には盛大なブラボーが飛んだが、指揮者の方には儀礼的だったように感じた。

 

歌手は黙役が出ることもあってほとんど棒立ち。声を聴かせるイタリア・オペラでは普通だが、これが遅いテンポの音楽に集中さす意図だったとしたら、歌う方も聴く方もストーリーに気を向けさせない意味で良かったかもしれない。

 

全体的には、造形的舞台は良いとしても随分変わったヴェルディを聴いたという印象が強い。

 

梅雨も上がり猛暑が待ち受けている。これではますます外出が億劫になる。

 

 

魅惑的プログラム満載
有難いことにワーグナーとリヒャルト・シュトラウスが多いのが目立つ。

最大の期待は待っていた「影のない女」。

「サムソンとデリラ」も見逃せない。

他にもマイアーの「サロメ」「エレクトラ」、ペレチャツコのホフマン3役など観たいものが多い。

ウィーンの魅力はやはり別格と思う。バイエルンもいいが。

 

97日 ヴェルディ:椿姫

Conductor: Giampaolo Maria Bisanti, Director: Jean-François Sivadier

With Irina Lungu, Charles Castronovo, Thomas Hampson

 

912日 ヴェルディ:ドン・カルロ

Conductor: Jonathan Darlington, Director: Daniele Abbado

With René Pape, Fabio Sartori, Simon Keenlyside, Dmitry Ulyanov, Anja Harteros, Elena Zhidkova

 

915日 オッフェンバック:ホフマン物語

Conductor: Frédéric Chaslin, Director: Andrei Serban

With Yosep Kang, Gaëlle Arquez, Luca Pisaroni, Michael Laurenz, Olga Peretyatko, Olga Peretyatko, Olga Peretyatko

 

925日 ヴェルディ:イル・トロヴァトーレ

Conductor: Alberto Veronesi, Director: Daniele Abbado

With Roberto Frontali, Michelle Bradley, Monika Bohinec, Fabio Sartori, Ildikó Raimondi

 

102日 ブリテン:真夏の夜の夢

Conductor: Simone Young, Director: Irina Brook

With Lawrence Zazzo, Erin Morley, Théo Touvet, Peter Kellner, Szilvia Vörös, Josh Lovell, Rafael Fingerlos, Rachel Frenkel, Olga Bezsmertna, Peter Rose

 

1011日 R.シュトラウス:ナクソス島のアリアドネ

Conductor: Peter Schneider, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Peter Matić, Jochen Schmeckenbecher, Kate Lindsey, Stephen Gould, Hila Fahima, Adrianne Pieczonka

 

1018日 R.シュトラウス:影のない女

Conductor: Christian Thielemann, Director: Vincent Huguet

With Andreas Schager, Camilla Nylund, Sebastian Holecek, Tomasz Konieczny, Nina Stemme

 

1026日 ヴェルディ:シモン・ボッカネグラ

Conductor: Paolo Carignani, Director: Peter Stein

With Simone Piazzola, Ferruccio Furlanetto, Fabio Sartori, Marina Rebeka

 

1031日 マスネ:ウェルテル

Conductor: Frédéric Chaslin, Director: Andrei Serban

With Vittorio Grigolo, Adrian Eröd, Elena Maximova

 

111日 ヴェルディ:マクベス

Conductor: Giampaolo Maria Bisanti, Director: Christian Räth

With Plácido Domingo, Ryan Speedo Green, Tatiana Serjan, Jinxu Xiahou

 

1115日 ヘンデル:アリオダンテ

Conductor: Christophe Rousset, Director: David McVicar

With Stephanie Houtzeel, Chen Reiss, Hila Fahima, Max Emanuel Cencic, Josh Lovell

 

1122日(バレエ) エドワード・クルーグ:ペール・ギュント

Conductor: Simon Hewett

 

1126日 チャイコフスキー:エフゲニー・オネーギン

Conductor: Michael Güttler, Director: Falk Richter

With Marina Rebeka, Boris Pinkhasovich, Pavol Breslik, Ferruccio Furlanetto

 

126日 プッチーニ:トスカ

Conductor: Marco Armiliato, Director: Margarethe Wallmann

With Evgenia Muraveva, Joseph Calleja, Bryn Terfel

 

1218日 オルガ・ノイヴィルト:オルランド

Conductor: Matthias Pintscher, Director: Karoline Gruber

With Kate Lindsey, Fiona Shaw, Eric Jurenas, Constance Hauman, Agneta Eichenholz, Leigh Melrose, Justin Vivian Bond

 

1222日 プッチーニ:ラ・ボエーム

Conductor: Marco Armiliato, Director: Franco Zeffirelli

With Saimir Pirgu, Anita Hartig, Marco Caria, Mariam Battistelli

 

1229日 アルビン・フリース:ペルシネット

Conductor: Guillermo García Calvo, Director: Matthias von Stegmann

 

1231日 J.シュトラウスII世:こうもり

Conductor: Nicholas Carter, Director: Otto Schenk

With Adrian Eröd, Laura Aikin, Jochen Schmeckenbecher, Margarita Gritskova, Benjamin Bruns, Clemens Unterreiner, Daniela Fally, Peter Simonischek

 

13日(バレエ) マニュエル・ルグリ(マリウス・プティパ他の振付に基づく):海賊

Conductor: Valery Ovsyanikov

 

15日 フンパーディンク:ヘンゼルとグレーテル

Conductor: Tomas Hanus, Director: Adrian Noble

With Boaz Daniel, Stephanie Houtzeel, Margaret Plummer, Andrea Carroll, Monika Bohinec

 

119日 ワーグナー:ローエングリン

Conductor: Valery Gergiev, Director: Andreas Homoki

With Ain Anger, Piotr Beczala, Cornelia Beskow, Egils Silins, Linda Watson, Boaz Daniel

 

124日 R.シュトラウス:サロメ

Conductor: Mikko Franck, Director: Boleslaw Barlog

With Herwig Pecoraro, Waltraud Meier, Lise Lindstrom, Michael Volle

 

21日 ベートーヴェン:レオノーレ(1805年版「フィデリオ」)

Conductor: Tomáš Netopil, Director: Amélie Niermeyer

With Jennifer Davis, Benjamin Bruns, Tobias Kehrer, Thomas Johannes Mayer

 

24日 ドヴォルザーク:ルサルカ

Conductor: Tomas Hanus, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Piotr Beczala, Elena Zhidkova, Jongmin Park, Olga Bezsmertna, Monika Bohinec

 

27日 ヴェルディ:オテロ

Conductor: Mikko Franck, Director: Adrian Noble

With Stephen Gould, Krassimira Stoyanova, Carlos Álvarez

 

215日 R.シュトラウス:エレクトラ

Conductor: Semyon Bychkov, Director: Uwe Eric Laufenberg

With Waltraud Meier, Christine Goerke, Simone Schneider, Norbert Ernst, Michael Volle

 

35日 プッチーニ:トゥーランドット

Conductor: Ramón Tebar, Director & Light Design: Marco Arturo Marelli

With Elena Pankratova, Roberto Alagna, Golda Schultz

 

315日 ワーグナー:ラインの黄金

Conductor: Adam Fischer, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Tomasz Konieczny, Norbert Ernst, Sophie Koch, Monika Bohinec, Leigh Melrose

 

318日 ワーグナー:ワルキューレ

Conductor: Adam Fischer, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Andreas Schager, Ain Anger, Tomasz Konieczny, Simone Schneider, Nina Stemme, Elisabeth Kulman

 

322日 ワーグナー:ジークフリート

Conductor: Adam Fischer, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Stephen Gould, Nina Stemme, Tomasz Konieczny, Leigh Melrose, Herwig Pecoraro

 

326日 プッチーニ:トスカ

Conductor: Giampaolo Maria Bisanti, Director: Margarethe Wallmann

With Sonya Yoncheva, Brian Jagde, Erwin Schrott

 

328日 ワーグナー:神々の黄昏

Conductor: Adam Fischer, Director: Sven-Eric Bechtolf

With Stephen Gould, Eric Halfvarson, Leigh Melrose, Nina Stemme, Waltraud Meier

 

44日 サン=サーンス:サムソンとデリラ

Conductor: Frédéric Chaslin, Director: Alexandra Liedtke

With Anita Rachvelishvili , José Cura, Clemens Unterreiner, Sorin Coliban

 

412日 ワーグナー:パルジファル

Conductor: Hartmut Haenchen, Direction and Stage: Alvis Hermanis

With Matthias Goerne, René Pape, Stuart Skelton, Boaz Daniel, Marina Prudenskaya

 

419日 R.シュトラウス:ばらの騎士

Conductor: Alain Altinoglu, Director: Otto Schenk

With Camilla Nylund, Lars Woldt, Sophie Koch, Chen Reiss

 

428日 ロッシーニ:アルジェのイタリア女

Conductor: Jean-Christophe Spinosi, produced by: Jean-Pierre Ponnelle

With Nicola Alaimo, Maxim Mironov, Marie-Nicole Lemieux

 

52日 ベートーヴェン:フィデリオ

Conductor: Adam Fischer, Director: Otto Schenk

With Tomasz Konieczny, Andreas Schager, Simone Schneider, Günther Groissböck

 

510日 ロッシーニ:ウィリアム・テル

Conductor: Michele Mariotti, Director: David Pountney

With Christopher Maltman, Juan Diego Flórez, Olga Peretyatko

 

517日 マニュエル・ルグリ(ルイ・メラント他の振付に基づく):シルヴィア

Conductor: Kevin Rhodes

 

519日 ウェーバー:魔弾の射手

Conductor: Axel Kober, Director: Christian Räth

With Camilla Nylund, Tomasz Konieczny, Andreas Schager, Hans Peter Kammerer

 

529日 モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ

Conductor: Michael Güttler, Director: Jean-Louis Martinoty

With Carlos Álvarez, Irina Lungu, Dmitry Korchak, Dinara Alieva, Erwin Schrott

 

611日 ドニゼッティ:ランメルモールのルチア

Conductor: Evelino Pidò, Production and costume design: Laurent Pelly

With George Petean, Brenda Rae, Michael Spyres

 

615日 ヴェルディ:仮面舞踏会

Conductor: Michele Mariotti, Director & Light Design: Josef Ernst Köpplinger

With Francesco Meli, Ludovic Tézier, Krassimira Stoyanova

 

617日 ヴェルディ:ナブッコ

Conductor: Guillermo García Calvo, Director: Günter Krämer

With Plácido Domingo, Jinxu Xiahou, Roberto Tagliavini, Tatiana Serjan

 

623日 ヴェルディ:椿姫

Conductor: Plácido Domingo, Director: Jean-François Sivadier

With Aida Garifullina, Benjamin Bernheim, Simon Keenlyside

 

626日 ヴェルディ:イル・トロヴァトーレ

Conductor: Marco Armiliato, Director: Daniele Abbado

With With George Petean, Marina Rebeka, Anita Rachvelishvili , Gregory Kunde, Ryan Speedo Green, Lydia Rathkolb

 

628日 ウィーン国立歌劇場のメンバーによるガラ・コンサート

 

630日 ヴェルディ:ファルスタッフ

Conductor: Zubin Mehta, Director: David McVicar

With Ambrogio Maestri, Simon Keenlyside, Yijie Shi, Olga Bezsmertna, Marie-Nicole Lemieux

 

2019.7.9(火)20:00 (現地ライブOPERAVISION)

出演

フィガロ:クリスティアン・ゲルハーゲル、スザンナ:ジョエル・ハーヴィー

アルマヴィーヴァ伯爵:サイモン・キーンリサイド、伯爵夫人:ユリア・クライター

ケルビーノ:カングミン・ジャスティン・キム ほか

ロイヤル・オペラ・ハウス合唱団、管弦楽団

指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー

演出:デイヴィッド・マクヴィカー

 

毎年夏はコンサートが少ないのでライブ中継を観ることが多くなる。先頃のウィーン、バイエルンに続いて今度はロイヤル・オペラ。「フィガロの結婚」なので何としてもという程ではなかったが、途中でやめてもよいと思って観た。ところがこれが大変素晴らしく、最後まで楽しんで観てしまった。

 

マクヴィカーの演出はかなり古いもののようで、全く伝統的リアルな美しい舞台。で何が良かったかというと歌手が素晴らしい。声だけでなく演技が物凄く上手いので、彼ら自身が舞台で楽しんでいるかのように振舞っていた。喜劇はこうなくてはいけないと思った。

 

スザンナ役のハーヴィーは初めて知ったが、声が清純、姿もスリムで可愛らしい。これまでケルビーノに求めていたような雰囲気を持つ、ちょっと茶目っ気のあるスザンナであった。そのケルビーノ役の方は韓国のカウンターテナー。ズボン役のメゾが演ずるとどうしても女らしくなってしまうが、キムは女っぽい男性で役柄にぴったり嵌っていた。伯爵夫人の前で歌う時など、歌い始めをわざとはずしてポーッとした気持ちを表したのには感心した。はじめはカウンターテナーと知らずに聴いていたくらいで、声も裏返ったような感じのない自然な声で凄いと思った。クライターも気品のある声で容姿も美しいから理想の伯爵夫人。この3人は極めて新鮮な印象を受けたが、こうなると著名なゲルハーゲルもキーンリサイドも見た目は分が悪い。その結果普通といったところである。特にゲルハーゲルは完璧な歌唱なのにフィガロには向いてないと思った。

 

ガーディナーの指揮は軽快に淀みない流れがあるが、一面アンサンブルが整然としてない感がある。ただオペラはオケも歌手も完全無欠でなくとも、これくらい自発的に演じた方が人間味があってよいと思う。

 

さてバイロイトもザルツブルグも始まるが、テレビ中継ライブがこちらでも観られるものがあるだろうか。

 

 

2019.7.6(土)20:00(現地ライブ)

出演

サロメ:マーリス・ペーターゼン

ヨカナーン:ヴォルフガング・コッホ

ヘロデ:ヴォルフガング・アップリンガー=シュペルハッケ

ヘロディアス:ミヒャエラ・シュスター

ナラボート:パヴォル・ブレスリク 

バイエルン国立歌劇場管弦楽団

指揮:キリル・ペトレンコ

演出:クシシュトフ・ヴァルリコフスキ

 

舞台公演は好きでないと言ったばかりの「サロメ」をバイエルンのライブストリームで観た。しかしこの新プロダクションは読み替えだが、生首は出ないし踊りも洗練されてて面白かった。いろいろ仕掛けが出てきて考えさせられるところも多かったが、音楽を邪魔しないのでとても良かった。結論的には「閉ざされた世界で、あり得ない愛が生まれ、それは死によって報われる」という何かワーグナーを観てるような気がした。

 

高い本棚に三方を囲まれたサロン。そこで芝居をやっているとドアを叩く音がする。皆慌てて本棚の後ろへ隠れると兵士が入ってくる。ここまでは前座で、これから「サロメ」が始まる、劇中劇の形をとっている。演出のヴァルリコフスキはポーランド人で、場所をナチに支配されたワルシャワに設定したらしい。ヘロデはナチのようだ。これは納得としても「サロメ」の中でどう読み込んだかはよく分からなかった。

 

印象に残ったところを挙げると、まずサロメの踊り。ソロでなくデュエットで相手は骸骨の面をつけている。死ぬことになっているヨカナーンを思いつつ踊っていることになる。実はヨカナーンもサロメに魅せられていた。また小姓も自殺したナラボートの傍を終わりまでずっと離れない。二人とも少なくとも表面的には報われない片想い。

 

次にナラボートが自殺するのは刀でもピストルでもなく薬。骸骨もサロメと踊った後薬を飲むが、これはヨカナーンが飲むのと同じ意味だと思う。またフィナーレではダンスしているユダヤ人男女に薬が配られていく。一方サロメはヨカナーンの首を手にし恍惚として、薬と思われる口紅を小姓に渡している。このように薬が何度も出てくるが、これはユダヤ人を毒殺した薬から来ているようだ。と同時に使われ方が全く違うが、男女を結び付ける薬として何故か「トリスタンとイゾルデ」の媚薬を連想してしまう。

 

3つ目はヨカナーンが殺されたはずなのにフィナーレで姿を現し悠々と煙草を吸っている。これは愛の成就か、はたまたナチに勝利したポーランド人の安堵であろうか? 傍らではヘロディアスが薬を飲んでいる。

 

サロメのペーターゼンが特に素晴らしい。放送で聴く限り、迫力の点ではそれ程でもないと思ったが、声は透明感があってきれいだし、それ以上に演技が上手くスタイルが美しい。世間知らずのお姫様ではなく、窮屈な社会から自由になりたい強い女性を最高に演じた。ヨカナーンのコッホは声の方は最高に素晴らしいが、もう少し若作りにできないかと思った。でもこれはいつも言ってることだが劇場で観ればそう思わないかもしれない。他の人も負けず劣らず素晴らしく良かった。

 

ぺトレンコの指揮はすべてが明確で構成力があり劇的だが、どこか冷めたように感ずる。もう少し感情的高揚があればと思うが、この「サロメ」では苦にならなかった。この人はオペラよりシンフォニーの方が真価が出るように思う。

 

舞台装置も適当なところがなく絵画的によく整った造りであった。

 

しかし一番強烈に感じたのは、棒立ちの時が一瞬もなく体当たりで迫真の演技をしていること。こうなると単に歌手というよりオペラが歌える俳優(役者)と言った方が相応しい。

 

このライブは劇場前の広場でも公開された。カーテンコールが終わって出演者が正面玄関に現れて紹介された。ペーターゼンが箱の中からコッホの生首を取り出し見せていた。舞台で見ることはなかったが、やはり見えないところまで丁寧に作り込んでいると感心した。

 

 

ベートーヴェンを知ったのは多分小学校の教科書ではなかったかと思う。ベートーヴェンの苦悩に共感して以来、クラシック音楽の中心にずっとベートーヴェンがあった。主なジャンルでオペラ、交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノ・ソナタなど全曲を聴いたのはベートーヴェンしかない。海外に行けるようになってからはウィーンが多いが、それも音楽を聴くばかりでなく、ベートーヴェン始め作曲家ゆかりの地を訪ねることができるからでもある。

 

①ベートーヴェンが住んだ家

真っ先に行くべきところはハイリゲンシュタットの遺書の家。言わずと知れたベートーヴェンが遺書を書いたところである。ウィーン中心部から離れた閑静な住宅街。住んだ家は3軒残ってるとのことだが、一つはホイリゲもう一つは個人の家で、ここだけが記念館として公開されている。前庭に大木があり狭い階段を上がったところにドアがある。普通の田舎家といった外観。中には遺書、楽譜(「英雄」の表紙、ナポレオンへの献呈を消してある有名もの)などがあるが、全部コピー。楽譜も書かれた文字も乱雑な感じがするが遺書はきちんと書いてあると思った。(最新の観光案内によるとこの記念館は大きく改装された由)

ハイリゲンシュタットの家

交響曲「田園」を発想したという小川の散歩道には驚いた。地図と首っ引きで探してやっと小さな案内板と胸像を見つけた。それで散歩道は分かったが小川がない。水が有るか無いか分からないくらいチョロチョロ流れてる溝しかない。どうもそれが小川らしい。その溝に沿って新興住宅が並んでいるので或いは元の姿が大きく変わっているのかもしれない。いずれにしてもこれにはがっかりした。なお偶然見つけたが、ハイリゲンシュタットには今は両方とも個人が住んでいるが、ベートーヴェンの家の近くにカール・ベームが住んだ家もあった。こちらは立派な建物で入り口にプレートがついている。

 

これもその時知ったがベートーヴェンはアン・デア・ウィーン劇場に住み込んだ時期があるという。現在の建物の横側が元々の正面玄関でその左手にプレートがあった。1803&1804にここに住み、オペラ、第3交響曲、クロイツェル・ソナタが生まれたとある。この真向かいにホテル・ベートーヴェンがあるのは如何にもウィーンらしい。
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城壁の一部が残る高台のパスクヴァティラハウスはリング沿いで向い側がウィーン大学と便利なところにある。螺旋階段を上った5階だが胸像やデス・マスクが展示されている。ただし実際に住んだのは隣の部屋だという。見た中ではここが一番立派で、ベートーヴェンも長く住んでいる。
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もう一つウィーン郊外バーデンの第9交響曲の家。夏に通った温泉地だが、コート、帽子、トランクなどが陳列されている。冬の日曜日だった所為か町は全く静か。商店も少なくタクシーすら見なかった。観光案内所も休み、道路標識も少なく、やっと見つけた家は個人宅の庭を入ったようなところにあった。こういう場所に入るのは勇気がいる。バーデンにも滞在した家が6軒あるそうだが、この第9の家だけが記念館になっている。(なお同じ建物がモーツアルト記念館にもなっている) 駅に着いたら硫黄の匂いがしたので温泉につかる時間があるなら試してみるのも面白いと思う。
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②ベートーヴェンの記念像

次にベートーヴェンの記念像を見てみよう。もっとも有名なのはベートーヴェン広場の像。一般観光客は隣接する市立公園にある金ピカのヨハン・シュトラウス像に行ってしまうからここは静かである。高い台座の上にあるので双眼鏡でもないと表情は読みづらい。この像の原型がコンツェルトハウスのロビーにあるからそれを見るのもよい。しかし教科書で見たような髪ボサボサ、厳つい顔のベートーヴェンは上に書いたパスクヴァラティハウスの胸像の方が近いと思う。
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もう一つベートーヴェンを偲ぶに良い像はハイリゲンシュタットの公園にある
散歩するベートーヴェン像。コートを着て腕を後ろに組みポケットに五線紙を突っ込んだ姿は何か考えてるようで、この場に相応しいがもう少しイメージに近い小川があればもっと印象深かったと思う。

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③ベートーヴェンが通ったレストラン

ベートーヴェンが通ったレストランも残っている。サロンとして利用されたこともあるのだろう。グリーヒェンバイズルは15世紀創業で建物が文化財。ベートーヴェンを始め多くの音楽家がよく訪れ、壁にはサインが残っているという。またフラウエンフーバーも18世紀マリア・テレジアお抱えの料理人が始めた店で、ベートーヴェンはこの2階で演奏会を開いた。しかしそういういわれの店へ行ったというだけで足跡を辿ったことにはならないと思う。他人が使ってるところへ押し入るなんてことは絶対できない。そうするにはいきなりではなく特別時間をとって予約する以外ない。
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余談だが内陸のドイツ系料理は脂っこくあまり好きでない。イタリア、フランスの方がまだ良い。ウィーンならケーキの方が美味しいと思う。

④ベートーヴェンのお墓

ベートーヴェンはウィーン中央墓地の音楽家特別区に葬られている。特別区の墓はお墓というよりモニュメントでその中でベートーヴェンだけはお墓らしい形をしている(因みにモーツァルトの墓は別にあるのでここはモニュメント)中央墓地は1874年の都市計画で現在の地に集められたので、それ以前に亡くなったベートーヴェンの元の墓は(シューベルトも)別の場所にあった。ウィーン中心部から北西の住宅街の中にシューベルト公園があるが、その奥にベートーヴェンとシューベルトお墓の跡が残されている。シューベルトの遺言により二人は並んで埋葬されているが、それは中央墓地に移っても同じである。
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中央墓地の前に花屋が並んでいる。ベートーヴェン巡りを終えるにあたり、そこでバラの花をあつらえ墓前に供えてお参りした。

 

 

(補遺)

ベートーヴェンを題材にしたものとして、クリムトのベートーヴェン・フリーズが分離派会館にある。分離派は過去にこだわらない全く自由な発想集団だが、第9交響曲を絵にしたものなら見ないわけにはいかない。だがいくらクリムトでもこの絵は好きになれない。第9をどう解釈したらこうなるのか全く理解できず、ただクリムトだから価値があるとしか思えなかった。












2019.6.30(日)15:00 愛知県芸術劇場コンサートホール

曲目

森口真司(指揮)

シベリウス:交響曲第3番 ハ長調 作品52

ブルックナー:交響曲第6番 イ長調

 

名前にブルックナーをつけた楽団はご本家のリンツ・ブルックナー管弦楽団くらいであろうが、こちらはアマオケでブルックナーの熱烈な信奉者の集まり。25回目ということは交響曲で3廻りに近い。この6番もプログラムによると3回目という。

 

ブルックナーとシベリウスの交響曲のうちあまり演奏されない6番と3番の珍しい組み合わせ。前半のシベリウスは失敗しないよう何かきれいに弾こうとしている演奏であった。変化不足で一本調子の感があり、迫力も今一だった。ところが後半のブルックナーになると息を吹き返したように元気で自信に満ちた素晴らしい演奏だった。曲に対する気持ちがシベリウスとは違っていると思った。音に厚みがあり構成の明確な力強く壮大な演奏で、2楽章のアダージョも美しかった。森口真司はリズムとアクセントを重視した指揮だからこの6番は相性が良いと思う。

 

アマチュア・コンサートは関係者が義理で来るみたいな雰囲気のこともあるが、マニアの多いブルックナーとなるとさすが違う。ゴソゴソ音をたてたり、居眠りする人も少なかった。

 

ブルックナーは教会育ちだから交響曲もオルガンのような響きでないと良さが出ない。去年は響きの良くない市民ホールだったから折角の8番も満足できなかったが、今年はコンサートホールに戻れて良かったと思う。

 

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