2019.9.7(土)19:00 (現地ライブ OTTAVA)

出演

ヴィオレッタ:エカテリーナ・シウリーナ(イリーナ・ルング降板)

アルフレード:チャールス・カストロヌーヴォ

ジェルモン:トーマス・ハンプソン  ほか

ウィーン国立歌劇場合唱団、管弦楽団

指揮:ジャンパオロ・ビザンティ

演出:ジャン=フランソワ・シヴァディエ

 

OTTAVAのシーズン・チケットを購入したので、これから毎週ウィーン国立歌劇場の公演を観られるようになった。必ずしも全プログラムに興味があるわけではないが、この方が割安でいちいち支払う面倒もない。

 

開幕公演は「椿姫」。本場でもそうなのかと多少うんざりするが、嫌いというのではなくどうせ観るなら他のものの方がよいといったところ。定番ものを観る時の関心事は歌手が誰かと演出がどうかのふたつである。今回は美貌のソプラノ、イリーナ・ルングに釣られたと言ってよい。ところが何とキャンセル。観るまで分からなかった。すっかり興味がなくなったが、シーズン初公演でもあるので資料整理をしながら終わりまで観た。残念ながらあまり書くことがない。

 

華やかな舞台のはずなのに黒一色で暗い。道具はほとんど何もない。ヴィオレッタの衣装も黒。音楽が鳴る前からヴィオレッタは苦しそうにアンニーナに助けられ薬を飲む。外向きの華やかさを一切取り去りヴィオレッタの悲しい境遇、苦しむ心情のみに焦点を合わせた演出であった。

 

主役3人は喝采を浴びていたが特別印象に残る歌唱という程でもなかった。ただレパートリー公演でそんなに稽古はしてないのによく動いていると思う。日本のオペラ歌手が歌う域からなかなか出られないのに、本場では歌いながら自発的に演じている感じがする。伝統の差であろうか。

 

ところで日本にも悲しい椿姫の伝説がある。戦国時代土佐三原村に椿姫という美しい娘がいた。父親の国侍は同じ身分の国侍に嫁がせる約束をしていたが、一方で家老の側室に入れる画策をする。それが発覚して国侍の間で戦が起こる。娘は自分が居なければと思い、桶に入って生き埋めになり自害したという。現在ある御霊神社に椿姫は祀られている。

 

オペラの題は「La Traviata(堕落した女)」になっているが、邦訳するの当たってデュマ・フィスの原作小説「La Dame aux Camelias(椿の花を持つ婦人)」をとったのは賢明と思う。自分が犠牲になるストーリーは日本の椿姫伝説にも似て、如何にも椿の花に相応しいではないか。

 

なお蛇足だが、「椿姫の伝説」というどぶろくが三原村の地域産品として販売されている。また椿は日本原産で学名にもCamellia japonica

と日本が明記されている。


(追記 9月12日)

ウィーンに行ってらっしゃる加藤浩子さんのレポが出ていました。ルングは本番直前のキャンセルでカヴァーも帰ってしまっていた。そこでたまたまそこに居合わせたカストロヌーヴォの奥様が2年前に椿姫を歌っていたので緊急出動になったとのこと。現場の大騒動が想像できます。ルングは3日目には歌って大熱演だったそうです。

 

それと知ってはシウリーナは出来過ぎの大健闘で大喝采も納得です。