2020.1.12(日)14:00 びわ湖ホール中ホール

出演

アイゼンシュタイン:二塚直紀、ロザリンデ:森谷真理

フランク:山下浩司、オルロフスキー公爵:藤居知佳子

ファルケ博士:市川敏雅、アルフレード:宮城朝陽

アデーレ:平尾 悠、イーダ:上木愛理李

プリント博士:蔦屋明夫、フロッシュ:林 隆史

びわ湖ホール声楽アンサンブル、日本センチェリー交響楽団

指揮:秋山和慶

演出:中村敬一

 

今回初めて行ったがびわ湖ホール声楽アンサンブルによるオペラへの招待シリーズ、日本語上演で親しみやすく予想以上に素晴らしい公演だった。

 

中規模だが本格的オペラと変らない。赤、黒、金の額縁的舞台。奥のスクリーンに居間、舞踏会広間、監獄を映し各幕の場面が分かるようにしている。前にあるのはソファーとテーブルくらいで、簡素ながらも色彩的に華やかな雰囲気があり、衣装も美しい。

 

日本語上演でも歌に字幕がついたのは良かった。セリフの時は問題ないが言葉が聞き取れないことが多いものだ。今回の訳詩は中山悌一によるものだそうで、字幕なしでもかなり分かったのは流石に歌手と思った。

 

舞台装置、日本語の他にもう一つびわ湖ホールの狙いがあるように思った。それは規模をいたずらに大きくせず、オペラを楽しませることを念頭に置いているということ。この「こうもり」は2幕後半のどんちゃん騒ぎを省略し、3幕フロッシュのセリフもびわ湖ホールに相応しいように大幅に変更していた。時間短縮、舞台人数の削減、地元の宣伝の点からも効果的だったと思う。

 

このオペレッタ、女声は歌唱で、男声は演技で魅せる感がある。可笑しさは歌ではなく、セリフと演技の力である。勿論オペラは歌唱が基本であるから、一面が良ければ他はどうでもよいというわけではない。歌手陣は森谷真理、山下浩司の客演を除いても、びわ湖ホール声楽アンサンブルの方々は素晴らしく、充実したキャストで揃っている。アイゼンシュタインの二塚直紀、フランクの山下浩司、ファルケ博士の市川敏雅、いずれも声が素晴らしいし演技も上手い。最も笑いを誘うのは歌わないフロッシュだが、その林 隆史は俳優でなく、ここのアンサンブルのバリトンで、なかなかの芸達者である。セリフ自体が笑える上に、聴衆にも一緒に歌わせたり、拍手を要求するなどして場を盛り上げていた。森谷は最近レパートリーがどんどん増えていて、今回「こうもり」を観たいと思ったのも彼女が歌うからである。欧米の第一線ソプラノにコロラチュルラからリリコ、スピントと変っていく人が多いように、彼女も同じ道を歩んでいる。これから10年最も期待できるソプラノと思う。1週間ほど前ウィーンの「こうもり」をTVで観たばかりだが、森谷のロザリンデともう一人オルロフスキー公爵はキャラ的にこちらの方が合っていると思った。

 

秋山和慶の指揮は真面目である。オケだけの演奏は良いと思うが、全体に面白くしようとする姿勢がないからリズムが重く感ずる。華やかさとリズム感に欠けるところはあったが、これは演ずる側にも問題があるように思う。

 

不満が全くないことはないが十分に楽しませてくれた素晴らしい公演であった。この日満席、補助イスまで出ていた。中には児童を引率した集団もいたが、どうもフロッシュの呼びかけに応えるために仕組まれたものだったようだ。オペラを楽しませる雰囲気作りにも役立っていると思う。このように滋賀と兵庫はオペラの自主公演に積極的で集客力も凄いのは立派だと思う。

 

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