2020.1.18(土)16:00 愛知県芸術劇場コンサートホール

出演

パブロ・フェランデス(チェロ) 名古屋フィルハーモニー交響楽団

指揮:沼尻竜典(指揮)

曲目

シューマン:チェロ協奏曲イ短調 作品129

(チェロ・アンコール カザルス編 カタロニア民謡「鳥の歌」)

ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指環』より[沼尻版]

・序夜『ラインの黄金』より~序奏、「ヴァルハラ城への神々の入城」

・第1日『ワルキューレ』より~「ワルキューレの騎行」、「魔の炎の音楽」

・第2日『ジークフリート』より~「ジークフリートの角笛」、「森のささやき」

                「ブリュンヒルデの目覚め」

・第3日『神々のたそがれ』より~「ジークフリートの葬送行進曲」    

                 終幕(ブリュンヒルデの自己犠牲)

 

名フィルの定期演奏会にはプログラム構成の狙いを表すタイトルがついている。今回は畢生の傑作とある。畢生とは生涯をかけたという意味である。「ニーべルングの指環」は誰しも異存がないと思うが、シューマンのチェロ協奏曲はそうかなぁと私には思える。

 

シューマンはドイツ音楽の中で苦手の方になるが、誕生日が同じと言う可笑しな理由で理解しようと努めてきた。抵抗がなくなったのは歳をとってからである。チェロ協奏曲で有名なのはドヴォルザークとハイドンで、それに比べシューマンは演奏される機会が少ないと思う。ピアノ、ヴァイオリンのような派手さがない楽器なので、要するにチェロのソロが浮かび上がらないように思う。尤もこれはシューマンの音楽全体がそういう感じではあるが。

 

独奏のパブロ・フェランデスは20代の若手チェリストで、日本音楽財団から貸与されたストラディヴァリウスを使用している。柔らかいきれいな音で抒情性豊かな表現をする。協奏曲ではオケに溶け込み過ぎの感があるが、アンコールの「鳥の歌」ではこれ以上ない弱音の美しさ、切ない気持ちの溢れ出た感動的演奏であった。この人は室内楽の方で良さが一層引き立つと思う。

 

さてお目当ての「ニーベルングの指環」。これは切れ切れの抜粋ではなく沼尻自身の編曲によるもの。ロリン・マゼールの編曲が有名だが、それよりかなり短い(2/3くらい)。但し両者には違いがあり、沼尻版は原作のオケ部分をつなぎ合わせたもの、マゼール版は歌も含めたオケ用編曲である。原4部作を観ているものにとっては、どうしても舞台場面を想いながら聴いてしまう。15時間を1時間に短縮すればほとんどの場面を省略しなければならないのは分かっている。でもやはり物足りなさを感ずる。全体物語にならないのは仕方ないとしても場面的にそうではないと思ってしまうことがある。休みなしで一つの作品として音楽の流れを作っていく訳だからそういう結果になるのではと思う。

 

しかしオケ演奏としては素晴らしかった。特に「ジークフリート」では名フィルの管の素晴らしさが十分発揮されていたし、「神々のたそがれ」では精魂傾けた全力演奏で原作全曲を聴いた後のような感動を覚えた。

 

5月には飯森泰次郎と関西フィルの「ニーベルングの指環」ハイライトが、また9月には三澤洋史と愛知祝祭の二日間に亘るハイライト公演がある。どちらも歌手が加わった演奏会形式による完全な抜粋である。ワグネリアンにとってオケ演奏以上にたまらなく待ち遠しい。