2019.11.30  フィルハーモニーホール(現地時間DCH)

出演

テオドール・クルレンツィス(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ザリーナ・アバーエワ(ソプラノ)、アンナリーザ・ストロッパ(メゾソプラノ)

セルゲイ・ロマノフスキー(テノール)、エフゲニー・ スタヴィンスキー(バス)

ムジカエテルナ合唱団 

 

今春予定だったクルレンツィスとムジカ・エテルナの来日が中止になり残念と思っていたところ、ベルリン・フィルとの共演がDCHで公開された。手兵のオケではないがベルリン・フィル初登場でどんな宗教曲になるか興味があって早速聴いた。

 

これは宗教曲でなく完全に劇的音楽であった。これまでYouTubeでチャイコフスキーとマーラーを聴いたが、全くその延長線上の演奏だった。強弱、緩急、テンポ、アクセント、フレーズの起伏、全く自由自在にいじくり自己流で押し通す。これまで手掛けてきた多くの指揮者の誰とも違う独創的で新鮮な音楽にアッと驚く。あまりにも強烈なショックに打ちのめされ唖然とする。本当に凄い指揮者が現れたものである。丁度ショパン・コンクールで優勝したブーニンが思い出された。

 

ヴェルディのレクイエムはもともと劇的過ぎて宗教曲でないと言った人もいるから、この演奏を最高と思う人も多いと思う。ならモーツァルトやフォーレはどうなるのだろうか。多分一聴して必死の祈りに感動するかもしれない。現にこのヴェルディ冒頭のキリエを聴いた時は何と気持ちのこもった演奏かと感動した。だが曲が進行するにつれ、それは祈りそのものでなく祈りの姿を表してるのではと思うようになった。

 

クルレンツィスがこの路線をずっと継承し続けるならいずれ飽きられるような気がする。標題音楽などあまり思索的でないものならまだよいかもしれないが、例えばブルックナーなどどうなるかと思う。

 

さすがのベルリン・フィルもこの指揮者にはいつものようには合わなかったとみえる。ただソリストと合唱は息がよく合っていた。

 

さはありながら凄い演奏であった。これからどう変わるかも含め目が離せない指揮者である。