2011.4.11 (ライブ収録OTTAVA)
出演
アンナ・ボレーナ:アンナ・ネトレプコ
ジョヴァンナ・シーモア:エリーナ・ガランチャ
エンリーコ8世:イルデブランド・ダルカンジェロ
リッカルド・パーシー卿:フランチェスコ・メーリ
スメトン:エリーザベト・クールマン ほか
ウィーン国立歌劇場合唱団、管弦楽団
指揮:エヴェリーノ・ピド
演出:エリック・ジェノヴェーズ
2011年プレミエ時の公演、ネトレプコのロールデビューでもあり、当時旬の豪華な歌手を集めて評判が高かった。BRDにもなって販売されている。
ドニゼッティ女王3部作と言われる最初の作品。英国16世紀チューダー朝のヘンリー8世(ここではエンリーコ8世)の実話がもとになっている。登場人物に置き換えて言えばエンリーコにとってアンナ・ボレーナは2度目の王妃、ジョヴァンナは3番目の王妃に当たる。因みに他の2作品「マリア・ストゥルダ」「ロベルト・デヴリュー」はヘンリー8世の子エリザベス1世の話で、3部作すべて王朝内の色恋がテーマになっている。
舞台セットは現代的な造形だが衣装は当時を彷彿させる豪華なもの。伝統的古典的な演出なのであまり書くことはないが、フィナーレで子供(後のエリザベス1世)を出したのは印象的だったし、断頭台を思わせるドアのところにアンナ・ボレーナが横たわるのも美しい処理であった。
アンナがアンナを演ずる奇遇になった。ネトレプコはこの時すでに歌う女優の雰囲気がある。声がきれいとは言えないが感情の入った表現力は凄い。王冠の魅力にひかれ恋を捨てた女の強さを残しつつも、捨てられた女の寂しさ無念さが歌唱によく表れていた。顔の表情も真に迫っていた。国王の愛人ジョヴァンナのガランチャは声が美しいし清潔感もあって素晴らしく、むしろネトレプコより好感が持てた。国王のダルカンジェロは肌理の粗い力強い声で悪人の役によく合っていた。アンナの元恋人リッカルドのフランチェスコ・メーリも甘いきれいな声で純真な気持ちがよく表れていた。クールマンは歌曲の方が向いていると思うが、このスメトンは純情な若い青年役で良かった。
ドニゼッティは多作家でオペラが80作くらいあるそうだ。どこからか依頼があったか知らないが、これだけ多ければ似たものが出来ても仕方ない。それにしても女王3部作を続けて観ようとは絶対思いませんね。
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