2009.
3.21 (ライブ収録)

出演

アミーナ:ナタリー・デセイ

エルヴィーノ:ファン・ディエゴ・フローレス

ロドルフォ:ミケーレ・ペルトゥージ

リーザ:ジェニファー・ブラック  ほか

メトロポリタン歌劇場合唱団、管弦楽団

指揮:エヴィリーノ・ピド

演出:メアリー・ジマーマン

 

MET2009年プレミエ時の公演。当時ベルカント界の双璧をなすスター、ナタリー・デセイとファン・ディエゴ・フローレスの共演と合って関心が高かった。二人は前年「連隊の娘」に出演し、これはライブビューイングの他にNHK-BSでも放送されたから多くの人が観たと思う。10年を経た今となっては懐かしい映像である。

 

デセイは西欧の歌手では珍しい小柄で美人のパリジェンヌ。もとは女優を志願したと言う。まだこれからという時に声帯を壊し2度の手術で長期休養をした。これは復帰後の公演で確かに声には難があったところもある。しかし弱音が特に美しくころがりも滑らかで表現力が良い。2013年にオペラの舞台からは引退したが、軽快な演技が光る稀有なソプラノで今日も並べる人がいないタイプと思う。

 

フローレスは輝かしい声とハイCの絶頂期であり圧倒するような歌唱であった。可愛いデセイとのコンビはそれだけで絵になり他の人では絶対に出来ない。「連隊の娘」はもっと良かったが、これも負けず劣らず素晴らしい。この頃のフローレスを現地で聴き逃したのを残念に思う。

 

ロドルフォ役のミケーレ・ペルトゥージは歌唱も演技も控え目だが、大柄だし貴族の雰囲気があって良かった。リーザ役のジェニファー・ブラックも美人で時に声の固さが気になることもあるが演技で補った。エヴィリーノ・ピドは軽快なリズムと歌手に十分に歌わせる指揮が素晴らしい。

 

メアリー・ジマーマンの演出はオペラのリハーサル室に置き換えたもの。アミーナは歌手、リーザはディレクターになっている。最初は皆私服姿で登場するが、最後は衣装を着けた本舞台となった。その境目は必ずしも判然としていなかったが、その自然な変化も良いところだと思う。前半はリハーサル室でむしろ地味な舞台だが、3幕ではピット上のジャンピング台で演技するし、フィナーレは民族衣装をつけた華やかな祝福ムードで締めた。

 

他の人には陰になって気の毒であったが、デセイとフローレスの二人舞台であった。