2010.12.11 (ライブ収録)
出演
ドン・カルロ:ロベルト・アラーニャ
王妃エリザベッタ:マリーナ・ポプラフスカヤ
国王フィリップ2世:フルッチョ・フルラネット
ロドリーゴ:サイモン・キーンリーサイド
エボリ公女:アンナ・スミルノヴァ  ほか
メトロポリタン歌劇場合唱団、管弦楽団
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:ニコラス・ハイトナー

ヴェルディの30近いオペラの中で最後から5番目の最高傑作。シェイクスピアによる3つの作品と同じく、こちらはシラーの戯曲「ドン・カルロス」を基にしている。多くの版があり5幕フランス語版は3時間半とスケールが大きくワーグナー並みに長いが、冗長の感じは全くしない。日本では4幕版が普通で5幕版の上演は数回しかないのではと思う。びわ湖ホール(イタリア語)、東京芸術劇場(フランス語)、それにMET2011来日公演(イタリア語)くらいではないか。

さすがはMETらしい豪華キャストである。この半年後に来日公演があったが、演出も違うし、キャストもポプラフスカヤを除いて皆異なっていた。NHKホールで観たが大震災の直後とて出演者は揃っていても何となくどさくさの組替え公演みたいであった。それでも来日してくれただけでも感謝の思いであった。しかし演奏は今回配信の方が圧倒的に熱気があった。

歌手は皆素晴らしかった。だがどちらかと言えば男声陣の方が良かったと思うが好みの問題かもしれない。タイトルロールのロベルト・アラーニャは情熱的で演技も剣で闘うシーンなど真に迫っていた。一方ロドリーゴのサイモン・キーンリーサイドは誠実理知的で気持ちを隠すのと爆発させる時の違いが何とも素晴らしかった。二人の友情の二重唱は最高。国王のフルッチョ・フルラネットは4幕の有名なアリアから大審問官とのやり取り迄、苦悩がにじみ出て感動的であった。暗さとド迫力が生きるバスの競合はこのオペラに聴きどころでもある。王妃のマリーナ・ポプラフスカヤは声が清いのは若い王妃によく合っていると思う。悲壮感があるし、宝石箱が無くなったと国王に駆け込む場面も慌てふためく感じがよく出ていた。エボリ公女のアンナ・スミルノヴァのパワーは凄い。しかしあり過ぎて王妃に後悔して詫びる場面など怒ってるように聴こえる。二人ともロシア人で控え目に演ずるのは日本人と気性が違うかもしれない。来日公演のエカテリーナ・グバノヴァもそうであったから。

指揮のヤニック・ネゼ=セガンは「カルメン」に継いで2作目のMET登場になる。昨日聴いた就任公演「椿姫」に比べると随分と粗削りの感がある。シンフォニーが多かったから舞台の歌手との一体感の点でまだ慣れていなかったのかと思う。

演出は読み替えがなくオーソドックスだが舞台セットは造形的であった。しかもそれが幕によって程度が違いリアルな部分もあり、また衣装が伝統的でリアルであるから必ずしも統一が取れているとは言い難い。規模は大きいが豪華ではなかった。少なくとも高級感がなくてはMETらしくないと思う。

ということで歌手の素晴らしさに尽きる公演だった。