2013.12.14 (ライブ収録)
出演
ファルスタッフ:アンブロージュ・マエストリ
クィックリー夫人:ステファニー・ブライズ
アリーチェ:アンジェラ・ミード
ナンネッタ:リゼット・オロペーサ
フォード:フランコ・ヴァッサロ  ほか
メトロポリタン歌劇場合唱団、管弦楽団 
指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:ロバート・カーセン


ヴェルディ最後の作品で実質唯一の喜劇、シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」に基づいている。ロバート・カーセンによるスカラ座、ロイヤル・オペラとの共同制作で、スカラ座の来日公演で観た人も多いと思う。ジェイムズ・レヴァインが腰痛等治療で休み、車椅子に座ったままの2年ぶりの復帰であった。

他のヴェルディ作品とは全然違う。話が人間賛歌の喜劇という他に、音楽がアリアでなくアンサンブルが中心になっている。それ故に歌唱でも演技でも息が合うことが重要であるが、その点キャスティングが面白かったと思う。

ロバート・カーセンの演出は読み替えはないもののイギリス貴族社会を取り払い現代のお笑い話にした。ファルスタッフの大食大飲を前面に出して舞台を作っている。台本のガーター亭はホテル、フォード家の部屋は料理教室並みの大きなキッチン、公園の森はホテルのオープンガーデンのようなところである。ベッド脇にルーム・サービスの料理が並んでいたり、キッチンで七面鳥を焼いたり、フィナーレは一同テーブルを囲んでのパーティーで終わる。実際よく食べる場面が出てくる。

そう言っては何だがキャスティングが妙で、演ずる歌手も大食いを思わせる巨漢が揃っていた。一人目は言わずと知れたアンブロージュ・マエストリ。「ファルスタッフ」はこの人の為にあるオペラのようで、このMET出演で200回になるそうだ。現在では他の人が演ずる例を知らないくらい完全に板についていて、声を外すのも演技の内と思える。

二人目はステファニー・ブライズ。クィックリー夫人を代役で歌って大評判になり、それ以来のはまり役になっている。表現力があって他にレパートリーも勿論あるが、適役はおばさん役とかに限られると思う。

三人目はアリーチェのアンジェラ・ミード。この時はまだ30代の若さだが声がきれいで素晴らしく、レパートリーを増やしつつある。しかし声だけで伸びていける時代ではないので、この人も適役は限られると思われる。

この3人で引っ張た「ファルスタッフ」の感があるが、この中に入るとナンネッタ役リゼット・オロペーサの声と容姿の可愛らしさが目立った。レヴァインの指揮もテンポが速く、陽気なリズム感があって良かった。

ヨーロッパのシャレた滑稽な舞台と違い、どこか大阪のおばちゃん臭のするお笑い劇であった。スカラ座来日公演と基本的に同じ演出でも出演者が違うと雰囲気がまるで違う感じになる。面白さの点ではこのMET公演の方が面白かった。