2013.1.5 (ライブ収録)
出演
エネアス:ブライアン・ヒメル
カッサンドラ:デボラ・ヴォイト
ディドー:スーザン・グラハム
コレーブ:ドゥウェイン・クロフト、エレニュス:エドアルド・ヴァルデス
ナルバル:クワンチェル・ユン、アンナ:カレン・ガーギル
イオパス:エリック・カトラー  ほか
メトロポリタン歌劇場合唱団、バレエ団、管弦楽団
指揮:ファビオ・ルイージ
演出:フランチェスカ・ザンベッロ

ベルリオーズ「トロイ人」全曲はこの5月ウィーン国立歌劇場のストリームで観た。作品についてはその時書いたので省略するとしてとにかく好きなオペラではない。今度はMETだからさぞかし立派な舞台が観られるかと期待したが特に感心したことは何もなかった。

読み替えのない普通の演出で舞台セットはやや抽象的。後方一段高いところにも左右に貫く舞台があり、その前に大きな円形の窓のついた不規則な網目状の囲いがある。トロイの木馬もそこに現れるからちょうど窓越しに見る形になり、想像したよりお粗末であった。舞台床が一部石畳になって上手に円形の火の祭壇が設けられていた。平土間の1等席からは見えないと思う。カルタゴの宮殿も市街模型の上に玉座が置いてある。分からなくはないがありきたりで質素である。フランチェスカ・ザンベッロはワシントン・ナショナル・オペラの芸術監督で、2016年「二ーベルングの指環」後半2作品を観たことがある。大味で良いとは思わなかった。

しかし歌手は素晴らしかった。エネアスのブライアン・ヒメルは当時33歳のMETデビューで、マルチェロ・ジョルダーニの代役として10日前に呼ばれたそうである。その前年ネーデルランド・オペラでロール・デビューをしていた。若々しい艶のある声で、終幕ディドーと別れイタリアへ出発する時の心の揺れが特に良かったと思う。カッサンドラのデボラ・ヴォイトも一貫した信念のあるところを演じて良かったが、第1部だけだから損な役ぶりである。やはり最高は第2部登場ディドーのスーザン・グラハムである。時を追っての心情変化が素晴らしいし、しかもトリを務めるから余計注目を浴びる。その他の歌手もそれほど強い印象は残らないがMETだから好演なことに変わりがない。

オペラは言葉によってストーリーが展開していくものだが、ベルリオーズは間奏、バレエ、合唱が多くて芝居の密度が低くなり、どうしても退屈してしまう。上演機会が少ないのも当然と思う。日本での公演はマリンスキーの来日公演(カットありコンサート形式)と読売日響100回記念公演(第2部のみカットありコンサート形式)だけである。今後もまずなかろうからその意味で2度も聴いたのは貴重な機会であった。


ウィーン国立歌劇場のストリームはこちら。
http://klahiroto-diary.blog.jp/archives/2020-05-02.html