2014.4.26 (ライブ収録)
出演
フィオルディリージ:スザンナ・フィリップス
ドラべッラ:イザベル・レナード
フェランド:マシュー・ポレンザーニ
グリエルモ:ロディオン・ポゴソフ
デスピーナ:ダニエル・ドゥ・ニース
ドン・アルフォンソ:マウリツィオ・ムラー
メトロポリタン歌劇場合唱団、管弦楽団
指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:レスリー・ケーニッヒ

「コジ・ファン・トゥッテ」はモーツァルトの中で最も好きなオペラで恐らく3大オペラより多く観ていると思う。テーマが人間の心の揺れから幸せに至る讃歌、落語のようなストーリーの中で男女6名が均等に個性を発揮、それをモーツァルトの美しい音楽が繋げてゆく、その結果単に面白いだけの喜劇でない感動が残る。こういうオペラって他にないと思う。

ジェイムズ・レヴァインの病気復帰後初の公演で、ピットに現れた瞬間大きな拍手が湧き嬉しそうに応えていた。車椅子に座ったままであったが、指揮ぶりは変わらず元気そうであった。ホンワカした雰囲気はないが現代的にキビキビしてディナーミックが大きいドラマティックな演奏であった。

6年前の映像で当時のMETとして若手(特に女声)を中心にしたキャストであった。女声陣は溌溂として個々の歌唱にはバラツキもあったけれどもアンサンブルは素晴らしかったと思う。フィオルディリージとドラべッラ姉妹を演じたスザンナ・フィリップスとイザベル・レナードは特に相性が良かったと思う。二人とも美人で美しい声、10代の娘らしい若さが感じられたし、顔も声も両方とも違いがはっきりしていたのが余計分かり易くて良かった。デスピーナのダニエル・ドゥ・ニースはもっとオーバーに演じてもよいと思ったが、衣装が別人と見えたのでこれくらいで良かったのかもしれない。

男声陣は女声に比べるとちょっと大人し過ぎると思った。フェランド役マシュー・ポレンザーニとグリエルモ役ロディオン・ポゴソフは声の明らかな違いがあったのは姉妹同様混同せずに観られて良かった。ポレンザーニの甘い声は素晴らしいが声が返るのはモーツァルトに相応しくない。ドン・アルフォンソ役マウリツィオ・ムラーはこの芝居の仕切り役としては一寸押しがないと思う。

舞台は全くオーソドックス。METの豪華さはないが色彩的に自然できれいだし、それなりに入念に作られていた。ただし姉妹の住いが田舎風の粗末なもので女中がいるような階級には見えなかった。しかしこれも姉妹の素朴さが出て良かったかもしれない。

一言で言えば若手美人歌手の活躍が目立った公演であったと思う。