1989.4.8 (ライブ収録)
出演
ヴォータン:ジェイムズ・モリス
ブリュンヒルデ:ヒルデガルト・ベーレンス
ジークリンデ:ジェシー・ノーマン
ジークムント:ゲイリー・レイクス
フリッカ:クリスタ・ルードヴィヒ
フンディング:クルト・モル  ほか
メトロポリタン歌劇場管弦楽団
指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:オットー・シェンク

「二ーベルングの指環」は4部からなり全体を通すと15時間もかかる。だから1作ずつ分けて上演されるのが普通で、それもキャストを統一して行うことは不可能に近い。このMETの公演は間隔は空いていても同一キャストで上演された稀有なものである。30年前だから出来たのかもしれない。

4部作のうち第1夜「ワルキューレ」は最も抒情的だから単独で上演されることも多い。8人のワルキューレを除けば歌手は僅か6人で、兄妹、夫婦、親子を二人で演ずるから親しみ易い。レヴァインはこの種のロマンティックな曲が特に素晴らしい。前夜の「ラインの黄金」より遥かに起伏に富んだ演奏をしていた。特に耳に残ったのはジークムントのウェルゼの叫びやフィナーレなど息の限界まで引張っていた。劇的効果満点であった。

歌手は今はもう聴けない往年の豪華メンバー。これだけ揃えられるのはMETしかない。特に個性的な声で印象が強かったのはジェシー・ノーマンとヒルデガルト・ベーレンス。ノーマンは高音の清らかさと低温の迫力でジークリンデの感情表現が見事だったし、ベーレンスはどの音域でも変わらない声の柔軟さ、取り分けキンキンしない高音がきれいで痺れてしまった。容姿も良くこういうブリュンヒルデはなかなかいない。

オットー・シェンクの舞台も前夜同様暗めで深い落ち着きがあり、天馬を出さなかったのも却ってリアリスティックで良かったと思う。ワルキューレの衣装も女性と戦士の両立姿を見栄えよくデザインしていた。この4部作はDVDも販売されているが写真しか観たことがないので明日からも楽しみである。

このMET映像、「ワルキューレ」のBestestである。