2014.2.8 (ライブ収録)
出演
ルサルカ:ルネ・フレミング
王子:ピョートル・ベチャワ
外国の公女:エミリー・マギー
イエジババ:ドローラ・ラジック
水の精:ジョン・レリエ  ほか
メトロポリタン歌劇場合唱団、管弦楽団
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:オットー・シェンク

「ルサルカ」は数か月前に同じくMET2017年の新制作を観たばかりだが、これは旧演出のもの。先のも素晴らしかったが、これはまた全てに亘って一段上をいく。オットー・シェンクの舞台とルネ・フレミングはじめキャストを見れば想像がつく。

舞台は映画のように美しい。美術と照明により自然の風景と見まがうばかりに仕上がって、湖面などまるで本当の水があるかのように見えた。また魔法使いイエジババと水の精はどうらん化粧と衣装により現世と違う雰囲気が見事であった。

ルサルカはルネ・フレミングがデビューした若い頃から歌っているはまり役で、純情な娘心の一途な想いと苦い思い出を感情豊かに歌った。声が役柄に合っているだけでなく、演技だけの長い場面も上手く演じていた。相手の王子はこのオペラでは一番難しい役で、ともに好いているルサルカと公女の両方を前にどっちつかずの感情を表現しなくてはならない。ピョートル・べチャワは若々しい声と容姿の持ち味を十分に生かしていた。公女のエミリー・マギーも甘く言い寄ったり怒ったりとちょっと悪い女を魅惑的に演じた。魔法使いイエジババのドローラ・ラジックは情け容赦なく厳しいお告げを強く歌った。水の精のジョン・レリエはこの中で一番若いが豊潤な声の素晴らしいバスである。歌唱では一番目に付いたくらいである。その上3人の森の精霊もきれいな声のハーモニーと清純な美しい姿で魅力的だったし、森番や調理人もなかなかのものだったと思う。これだけキャストが揃うのも珍しいくらいである。

ヤニック・ネゼ=セガンの指揮はおとぎ話のやんわりしたところはないけれども物凄く劇的で素晴らしかった。ファビオ・ルイージが一時期METのシェフを狙っているようにも見えたが、結果的にカナダ出身のネゼ=セガンの方が若いので長く続けられるしアメリカらしいところが出ると思う。その後の活躍を見てると間違っていなかったのではと思う。

演出、音楽とも申し分ない極め付きの決定版であった。

そう言えばドローラ・ラジックは今年引退とか聞いた。この人は医学からの転向組で外国にはそういう人が多い。日本ではややもすると専門でないと言われがちなのに豪い違いである。